【超・深掘り解説】金利上昇は銀行株の天国?地獄? 高すぎる債権利回りの「本当の怖さ」まで、例を挙げて徹底解明!

株式投資メモ

「最近、日銀やFRBが金利を上げたってニュースで見たけど、これって私たちの生活や、銀行、特に銀行株にどういう影響があるの?」 「金利が上がると銀行は儲かるって聞くけど、本当?」 「『債権利回り』っていう言葉もよく聞くけど、金利とどう違うの? 高すぎるとヤバいってどういうこと?」

こんな疑問、感じていませんか? 金融の世界は専門用語が多く、特に金利や債券の話になると、複雑で敬遠しがちかもしれません。しかし、これらの動きは、私たちの経済や資産形成に密接に関わっています。

この記事は、そんな疑問を解消し、金利、銀行株、債権利回りの複雑な関係性を、豊富な例を交えながら、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解き明かすことを目指します。単なる表面的な解説ではなく、その背景にあるメカニズムリスクまで深く掘り下げます。

長文になりますが、じっくりお付き合いいただければ、以下の点が腑に落ちるはずです。

  • なぜ金利が上がるのか? 経済における金利の役割とは?
  • 金利上昇が銀行にもたらす**「光」**:収益アップの仕組み(数値例付き)
  • 金利上昇が銀行にもたらす**「影」**:見過ごせないリスク(具体例付き)
  • 「債権利回り」の正体と、金利との微妙な関係
  • 債権利回りが**「高すぎる」**となぜ危険なのか? その本当の怖さ
  • 結局、金利上昇局面で銀行株はどう考えればいいのか?

金融の知識に自信がない方でも理解できるよう、専門用語は丁寧に解説し、具体的な例をたくさん用います。この記事を読み終える頃には、きっと金融ニュースの見方が変わり、ご自身の判断に自信が持てるようになっているでしょう。

この記事で解き明かすこと

  • 金利上昇の二面性: 銀行にとっては収益チャンスだが、無視できないリスクも多数存在。
  • 具体例で理解: 利ざや計算、ローン返済額、債券評価損などを数値例で示す。
  • 債権利回りの重要性: 市場の「声」を反映し、経済全体に影響を与える。
  • 「高すぎる利回り」の恐怖: 経済と金融システムを揺るがすメカニズムを解説。
  • 銀行株投資のヒント: 単純な公式ではなく、総合的な視点の重要性を強調。

    1. この記事で解き明かすこと
  1. まずは基本から:経済の舵取り役「金利」とは?
    1. 金利は経済の「体温計」であり「アクセル・ブレーキ」
  2. 金利上昇と銀行の収益(追い風編):なぜ「儲かる」と言われるのか?
    1. 銀行のビジネスの源泉「利ざや(NIM)」とは?
    2. 金利上昇で利ざやが拡大する仕組み(と期待)
    3. イールドカーブ(長短金利差)も重要
  3. 金利上昇と銀行のリスク(逆風編):話はそう単純じゃない!
    1. リスク①:お金を借りたい人が減る(貸出需要の減少)
    2. リスク②:預金獲得コストが思ったより上がる(預金コストの上昇)
    3. リスク③:持っている債券の価値が下がる(保有債券の評価損)
    4. リスク④:景気が冷え込み、貸したお金が返ってこない(景気後退と貸倒リスク)
  4. もう一つの主役「債権利回り」の世界へようこそ
    1. 債権利回りとは? – 市場が映し出す「期待」と「リスク」
    2. なぜ金利が上がると債権利回りも上がるの? シーソーの関係を再確認
  5. 本当の恐怖!債権利回りが「高すぎる」と牙をむく時
    1. なぜ債権利回りが「高すぎる」状況になるのか?
    2. 高すぎる利回りがもたらす深刻な影響
  6. 少し補足:銀行の種類によっても影響は違う?
  7. 結論:金利上昇と銀行株、「単純な答え」はない!総合的な視点を持とう
  8. おわりに:理解は最強の武器
  9. たび友|サイトマップ

まずは基本から:経済の舵取り役「金利」とは?

本題に入る前に、基本となる「金利」について、もう少し詳しく見ていきましょう。

金利は経済の「体温計」であり「アクセル・ブレーキ」

金利とは、お金の貸し借りに対するレンタル料(利子)の割合のことです。世の中には様々な金利がありますが、特に注目されるのが、日本銀行(日銀)やアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)といった**中央銀行がコントロールする「政策金利」**です。これは、銀行がお互いにお金を貸し借りする際の金利(短期金利)の目標となるもので、経済全体の金利水準に大きな影響を与えます。

中央銀行は、経済の状況を見て政策金利を上げ下げします。

  • 利上げ(金利を引き上げる): 経済が過熱気味で、インフレ(物価の持続的な上昇)が心配な時に行われます。金利を上げることで、企業や個人がお金を借りにくくなり、設備投資や消費といった経済活動を少し抑える効果があります。**経済の「ブレーキ」**を踏むイメージです。
  • 利下げ(金利を引き下げる): 景気が悪く、デフレ(物価の持続的な下落)が心配な時に行われます。金利を下げることで、お金を借りやすくし、設備投資や消費を促して経済を活性化させようとします。**経済の「アクセル」**を踏むイメージです。

また、市場では、日々のお金の需要と供給によって**「市場金利」**が決まります。これには、銀行間の短期資金のやり取りで決まる短期金利や、国債などの売買を通じて決まる長期金利などがあります。政策金利の変更は、こうした市場金利にも波及していきます。

このように、金利は経済の状況を映し出す**「体温計」のような役割と、経済の方向性を調整する「アクセル・ブレーキ」**のような役割を持っているのです。


金利上昇と銀行の収益(追い風編):なぜ「儲かる」と言われるのか?

では、いよいよ本題です。金利が上がると、なぜ銀行は儲かると言われるのでしょうか? その最大の理由は**「利ざや(純金利マージン:NIM)」の拡大**にあります。

銀行のビジネスの源泉「利ざや(NIM)」とは?

銀行の基本的な収益源は、預金者から集めたお金を、企業や個人に貸し出す際の**「貸出金利」と、預金者に支払う「預金金利」の差額です。これが利ざや(りざや)、専門用語で純金利マージン(Net Interest Margin: NIM)**と呼ばれるものです。

【超シンプル計算例:利ざや(NIM)】

銀行が集めた預金全体の平均金利が 0.1% で、貸し出しているお金全体の平均金利が 1.1% だったとします。 この場合、銀行の利ざや(NIM)は、 1.1% – 0.1% = 1.0% となります。この1.0%が、銀行が貸借りの差から得る基本的な儲けの率です。

金利上昇で利ざやが拡大する仕組み(と期待)

金利が上昇する局面では、一般的に銀行は、企業や個人向けの貸出金利を引き上げやすくなります。特に、住宅ローンや企業向け融資の多くは、市場金利(短期プライムレートや長期プライムレートなど)に連動する変動金利が採用されているため、世の中の金利が上がれば、それに伴って貸出金利も上昇します。

一方で、預金金利はどうでしょうか? もちろん、金利上昇に合わせて預金金利も引き上げられますが、その上昇ペースは貸出金利よりも緩やかになることが多いと考えられています。なぜなら、普通預金などの流動性が高い預金は、金利の高さよりも「いつでも引き出せる利便性」を重視する人が多く、金利が少し上がったからといって、すぐに他の銀行に移るわけではないからです(金利感応度が低い層もいる)。また、企業が運転資金などを置いておく当座預金には、通常、金利が付きません。

そのため、金利上昇局面では、「貸出金利の上昇幅 > 預金金利の上昇幅」となりやすく、結果として利ざや(NIM)が拡大するという期待が生まれるのです。

【超シンプル計算例:金利上昇後の利ざや(NIM)】

政策金利が引き上げられ、市場金利も上昇したとします。 銀行が貸出金利を平均 1.8% に引き上げ、預金金利を平均 0.3% に引き上げたとしましょう。 この場合、利ざや(NIM)は、 1.8% – 0.3% = 1.5% となり、金利上昇前の1.0%から0.5%ポイント拡大しました。これが銀行の収益増加につながる、というわけです。

イールドカーブ(長短金利差)も重要

さらに、銀行の収益には**イールドカーブ(利回り曲線)**の形状も影響します。イールドカーブとは、満期までの期間が異なる債券の利回りをグラフにしたものです。通常、期間が長いほど利回りは高くなる「順イールド」になります。

銀行は、短期で調達した資金(預金など)を、長期で運用(貸出など)することが多いビジネスモデルです(長短金利変換機能)。そのため、長期金利と短期金利の差(長短金利差)が大きいほど、利ざやを確保しやすくなります。金利上昇局面でも、長期金利が短期金利よりも大きく上昇する(イールドカーブがスティープ化する)場合は、銀行収益にとってより有利になります。

この「利ざや拡大期待」こそが、金利上昇局面で銀行株が注目され、株価が上昇する(かもしれない)最大の理由なのです。

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金利上昇と銀行のリスク(逆風編):話はそう単純じゃない!

しかし、世の中そんなに甘くはありません。金利上昇は銀行にとって、無視できない様々なリスクやマイナス面ももたらします。

リスク①:お金を借りたい人が減る(貸出需要の減少)

金利が上がるということは、お金を借りる際のコストが増えるということです。これは、企業にとっても個人にとっても大きな負担増となります。

【具体例:住宅ローン返済額の変化】

あなたが3,000万円の家を、35年ローン(元利均等返済)で購入するとします。

  • 金利1.0% の場合:毎月の返済額は約8万4,686円
  • 金利2.0% の場合:毎月の返済額は約9万9,378円

金利が1%上がるだけで、毎月の返済額は約1万5,000円も増え、総返済額では600万円以上の差になります!

これだけ負担が増えると、「今は家を買うのはやめておこうかな」「企業の設備投資も少し様子を見よう」と考える人が増えるのは自然なことです。結果として、銀行の主要なビジネスである貸出そのものが伸び悩んでしまうリスクがあります。いくら利ざやが拡大しても、貸し出すお金の量が増えなければ、銀行全体の収益は大きく増えません。

リスク②:預金獲得コストが思ったより上がる(預金コストの上昇)

先ほど、預金金利の上昇は緩やかになりがち、と説明しましたが、常にそうとは限りません。特に近年は、ネット銀行などが魅力的な金利の定期預金を提供して、積極的に預金を集めようとしています。

金利上昇局面で、他の銀行が預金金利をどんどん引き上げていくと、顧客の流出を防ぐために、自分たちの銀行も予想以上に預金金利を引き上げざるを得なくなる可能性があります。

【超シンプル計算例:預金コスト上昇で利ざやが変わらないケース】

金利上昇後、貸出金利は平均 1.8% に引き上げられたものの、預金獲得競争が激しく、預金金利も平均 0.8%まで引き上げなければならなかったとします。 この場合、利ざや(NIM)は、 1.8% – 0.8% = 1.0% となり、金利上昇前の1.0%から全く拡大しませんでした。これでは、銀行の収益は期待したほど伸びません。場合によっては、預金金利の上昇ペースが貸出金利を上回り、利ざやが縮小してしまうリスクすらあります。

リスク③:持っている債券の価値が下がる(保有債券の評価損)

銀行は、預かったお金を貸し出すだけでなく、国債や社債といった債券にも投資して運用しています。実は、これが金利上昇局面で大きなリスク要因となることがあります。

理由は後ほど詳しく説明しますが、金利が上昇すると、既に発行されている債券の市場価格は下落する傾向があります。銀行が、過去の低金利時代に購入したたくさんの債券を持っている場合、金利上昇によってこれらの債券の価値が下がり、**「評価損(含み損)」**が発生してしまうのです。

【例:保有債券の評価損】

ある銀行が、額面100億円分の国債ポートフォリオ(様々な国債の組み合わせ)を持っているとします。金利上昇によって、このポートフォリオ全体の市場価値が5%下落したとすると、 100億円 × 5% = 5億円 の評価損が発生します。

この評価損は、すぐに実現する損失ではない場合もありますが(満期まで持てば額面で戻ってくるため)、銀行の決算(財務諸表)には影響を与えます。特に、「その他有価証券」として分類される債券の評価損は、銀行の自己資本を直接減少させる要因となり、銀行の健全性に対する懸念を高める可能性があります。2023年にアメリカで起きた一部銀行の経営破綻の背景にも、この金利上昇による保有債券の評価損問題がありました。

リスク④:景気が冷え込み、貸したお金が返ってこない(景気後退と貸倒リスク)

最も警戒すべきリスクの一つが、急激すぎる金利上昇や高金利の長期化による景気後退です。金利上昇が経済のブレーキとして効きすぎると、企業の業績が悪化し、個人の収入も減少し始めます。

そうなると、銀行からお金を借りていた企業や個人が、予定通りに返済できなくなるケースが増えてきます。これが**「貸倒れ(かしだおれ)」です。銀行は、貸倒れに備えて「貸倒引当金」**という費用を積み増す必要があり、これが銀行の利益を大きく圧迫します。

過去の金融危機(例えばリーマンショックなど)を思い出すと、景気後退が深刻化すると、貸倒損失が急増し、銀行経営に深刻なダメージを与えることが分かります。金利上昇が景気後退の引き金となる場合、それは銀行にとって非常に大きな逆風となるのです。


もう一つの主役「債権利回り」の世界へようこそ

さて、銀行株を考える上で、金利と並んで非常に重要なのが**「債権利回り」**の動きです。これは金利と密接に関係していますが、少し違う側面も持っています。

債権利回りとは? – 市場が映し出す「期待」と「リスク」

債券は、国(国債)や企業(社債)がお金を借りるために発行する証文でしたね。そして債権利回りは、その債券に投資した場合に得られる実質的な収益率のことです。

債権利回りは、単に現在の金利水準だけでなく、**市場に参加している投資家たちの「将来に対する期待や懸念」**を色濃く反映します。

  • **将来のインフレが高まると予想されれば、**投資家はより高いリターンを求めるため、債権利回りは上昇しやすくなります。
  • **将来の経済成長が鈍化すると予想されれば、**安全資産とされる国債への需要が高まり、債券価格が上昇(利回りは低下)しやすくなります。
  • **発行体(国や企業)の信用リスクが高いと判断されれば、**投資家はリスクに見合う高いリターンを要求するため、利回りは上昇します。

つまり、債権利回り(特に長期国債の利回り)は、**政策金利のように中央銀行が直接コントロールするものではなく、市場の様々な思惑が絡み合って決まる「市場の声」**のようなものなのです。

なぜ金利が上がると債権利回りも上がるの? シーソーの関係を再確認

先ほども触れましたが、金利と債券価格、そして債権利回りの関係は非常に重要なので、もう一度、例を使って確認しましょう。ポイントは**「債券価格と利回りはシーソーの関係」**ということです。

【例:債券価格と利回りのシーソー関係】

市場に、額面100万円、年間の利子(クーポン)が1万円(利率1%)の国債があるとします。この国債は1年後に満期を迎えるとします。

  1. 基準ケース: もしこの国債が市場で100万円で売買されていれば、投資家は100万円を支払い、1年後に利子1万円と元本100万円、合計101万円を受け取ります。実質的な収益率は 1% です。これが現在の利回りです。
  2. 金利上昇ケース: ここで、世の中の金利が上昇し、新しく発行される債券の利率が2%になったとします。すると、利率1%の古い国債の魅力は薄れますね。この古い国債を市場で売ろうとしても、100万円では誰も買ってくれません。そこで、価格を下げて、例えば約99万円で売るとします。 投資家は99万円を支払い、1年後に合計101万円を受け取ります。差額の利益は2万円です。投資額99万円に対するリターンは約 2% (正確には (101-99)/99 ≒ 2.02%) となり、利回りは上昇しました。 つまり、金利上昇 → 古い債券の価格下落 → 利回り上昇 という流れです。
  3. 金利低下ケース(逆のパターン): もし世の中の金利が低下し、新しい債券の利率が0.5%になったらどうでしょう? 利率1%の古い国債は魅力的になります。欲しい人が増え、価格が上昇し、例えば約100万5千円で売買されるかもしれません。 投資家は100万5千円を支払い、1年後に101万円を受け取ります。差額の利益は5千円です。投資額100万5千円に対するリターンは約 0.5% (正確には (101-100.5)/100.5 ≒ 0.498%) となり、利回りは低下しました。 つまり、金利低下 → 古い債券の価格上昇 → 利回り低下 という流れです。

このように、金利上昇局面では、一般的に債権利回りも上昇する傾向にあるのです。


本当の恐怖!債権利回りが「高すぎる」と牙をむく時

問題は、この債権利回りが**「高すぎる」**と見なされる水準まで上昇してしまう場合です。これは、単なる金利上昇の影響を超えて、経済や金融システムに深刻なダメージを与える可能性があります。

なぜ債権利回りが「高すぎる」状況になるのか?

債権利回りが異常な水準まで上昇する背景には、以下のような深刻な要因が考えられます。

  • 制御不能なインフレ懸念: インフレが止まらず、今後さらに悪化すると市場が強く懸念する場合、投資家はインフレで目減りする分を補うため、非常に高い利回りを要求します。
  • 国の財政への信認低下: 国債を発行している国の財政状況が悪化し、「本当に満期にお金を返せるのか?」という疑念(信用リスク)が高まると、投資家は高いリスクプレミアム(上乗せ金利)を要求し、国債利回りが急騰します。
  • 極端なリスクオフ: 世界的な金融不安などが発生し、投資家がリスクを極端に避け、安全とされるわずかな資産(例えば、特定の国の短期国債や現金)以外からは資金を引き揚げようとする場合、他の多くの債券(特に信用力の低い社債など)の価格が暴落し、利回りが急騰することがあります。
  • 需給バランスの悪化: 国債などの発行量が、市場の吸収能力を超えて非常に多くなった場合、買い手が少なくなり価格が下落(利回りが上昇)します。

高すぎる利回りがもたらす深刻な影響

このような背景で債権利回りが「高すぎる」水準になると、経済や金融システムに以下のような破壊的な影響が及びます。

  1. 社会全体の借金コストが急騰: 国債利回り(特に長期金利)は、住宅ローン金利、企業の借入金利、クレジットカードの金利など、あらゆる金利の基準となります。これが異常な高さになると、社会全体の借金コストが耐えられないレベルまで上昇します。
    • 例: 住宅ローン金利が5%や6%といった水準になれば、家を買える人は激減し、住宅市場は凍り付きます。企業の借入金利が10%を超えれば、多くの企業は新規投資を断念し、運転資金の確保すら困難になるかもしれません。
  2. 経済活動が急速に凍結: 借入コストの急騰は、企業の設備投資や個人の消費を直撃し、経済活動全体が急速に縮小します。工場の閉鎖、店舗の倒産、失業者の増加といった事態が連鎖的に発生し、深刻な**不況(デフレスパイラルに陥る可能性も)**に陥るリスクが高まります。
  3. 株式市場の大幅な調整(暴落リスク): 安全なはずの国債でさえ非常に高い利回りが得られるなら、リスクのある株式に投資する魅力はほとんどなくなります。株式市場から債券市場へと大規模な資金逃避が起こり、株価が大幅に下落(暴落)する可能性があります。
  4. 金融システムの機能不全(信用収縮): 銀行にとっては悪夢のような状況です。
    • 資金調達が困難に: 市場全体の金利が高騰し、預金獲得コストも急上昇するため、銀行自身の資金繰りが厳しくなります。
    • 保有資産の価値が暴落: 保有する債券の評価損がさらに拡大し、自己資本が大きく毀損します。
    • 貸倒損失が激増: 景気の急激な悪化により、貸出先の倒産が相次ぎ、貸倒損失がコントロールできないレベルまで膨らむ可能性があります。
    • 結果:貸し渋り・貸し剥がし: 自己資本を守り、リスクを回避するため、銀行は企業や個人への新規融資を極端に絞り込んだり(貸し渋り)、既存の融資を無理に回収しようとしたり(貸し剥がし)する動きに出る可能性があります。これが信用収縮と呼ばれる状態で、お金が世の中に回らなくなり、経済活動をさらに麻痺させる悪循環に陥ります。

このように、「高すぎる債権利回り」は、単なる金利上昇とは次元の違う、経済と金融システムの安定性を根幹から揺るがしかねない非常に危険なシグナルなのです。


少し補足:銀行の種類によっても影響は違う?

これまで銀行全体の話をしてきましたが、実際には銀行の種類によって、金利上昇の影響の受け方は少し異なります。

  • メガバンク: 大企業向け融資や国際業務、市場取引なども多く、金利上昇の影響は多岐にわたります。グローバルな金利動向の影響も受けやすいです。
  • 地方銀行: 地域の中小企業や個人向け貸出が中心であり、その地域の景気動向に業績が左右されやすい傾向があります。金利上昇が地域経済を冷やす場合、影響はより深刻になる可能性があります。一方で、地域での預金シェアが高ければ、預金コストの上昇をある程度抑えられるかもしれません。
  • ネット銀行: 比較的高い預金金利を提示して預金を集める戦略をとっている場合が多く、金利上昇局面での預金獲得競争の影響を受けやすい可能性があります。一方で、店舗を持たないためコスト構造が異なり、テクノロジーを活用した効率的な運営が強みとなります。

このように、一言で「銀行」といっても、そのビジネスモデルや置かれた環境によって、金利上昇に対する耐性や収益機会は異なる点を頭に入れておくと良いでしょう。


結論:金利上昇と銀行株、「単純な答え」はない!総合的な視点を持とう

さて、長々と解説してきましたが、結論として何が言えるでしょうか?

金利上昇、債権利回り、銀行株の関係は、「〇〇が上がれば××も上がる」といった単純な公式で語れるものではない、ということです。

  • 金利上昇の「光」: 利ざや(NIM)拡大による収益増加への期待。これは確かに存在します。
  • 金利上昇の「影」: 貸出需要の減少、預金コストの上昇、保有債券の評価損、そして景気後退による貸倒リスクの増加。これらの逆風が強まれば、光はかき消されてしまいます。
  • 「高すぎる債権利回り」の恐怖: これは単なる影ではなく、経済全体と金融システムを脅かす深刻なリスクであり、銀行経営にとっては致命傷になりかねません。

したがって、「金利が上昇しているから、銀行株は買いだ!」と考えるのは、あまりにも短絡的です。投資家としては、以下の点を総合的に見極める必要があります。

  1. 金利上昇の「ペース」と「水準」: 緩やかな上昇なのか、急激な上昇なのか? 目指す金利水準はどの程度か?
  2. 金利上昇の「背景」: なぜ金利が上がっているのか? 健全な経済成長に伴うものか、それとも手に負えないインフレを抑え込むための苦肉の策か?
  3. 「債権利回り」の動向: どの程度の水準にあるのか? なぜその水準なのか?(インフレ期待? 財政懸念? リスクオフ?)
  4. 「イールドカーブ」の形状: 長短金利差は拡大しているか、縮小しているか?
  5. 「経済全体の状況」: 景気は拡大しているのか、後退に向かっているのか? 企業の業績や個人の雇用・所得環境はどうか?
  6. 個別の「銀行の経営状況」: NIMの実際の動向、貸出残高の伸び、貸倒引当金の状況、保有有価証券の評価損益、自己資本比率などをチェックする。

これらの要素を丹念に追いかけ、複合的に分析することで、初めて金利上昇局面における銀行株への投資判断が可能になるのです。


おわりに:理解は最強の武器

金融の世界は複雑で、常に変化しています。しかし、その根底にある基本的なメカニズムを理解しておくことは、情報に惑わされず、冷静な判断を下すための最強の武器になります。

この記事が、金利、銀行、債権利回りという、一見難解に見えるテーマへの理解を深め、皆様の経済や金融に対する見方をよりクリアにする一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

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