【微分完全ガイド】必須公式から応用テクニックまで!計算例付きで徹底解説
「微分って難しそう…」「公式が多すぎて覚えられない!」
数学、特に微積分学で多くの人がつまずきやすい「微分」。しかし、微分は物事の「変化」を捉えるための非常に強力なツールであり、科学技術から経済学まで、現代社会のあらゆる場面で活躍しています。変化の激しいこの世界を理解するためにも、微分の考え方はきっとあなたの役に立つはずです。
この記事では、プロのブロガーであり微分の専門家でもある私が、高校数学から大学初級レベルで学ぶ微分の必須公式とその使い方を、豊富な計算例と共に分かりやすく解説します。
この記事を読めば、以下のことが分かります:
- 微分とは何か、なぜ重要なのか
- 基本的な微分の公式とその使い方
- 積・商・合成関数といった組み合わせ関数の微分方法
- 指数関数、対数関数、三角関数など、関数別の微分公式
- 陰関数微分や対数微分法などの応用テクニック
- 微分学習でつまずきやすいポイントと注意点
もう微分で悩むのは終わりにしましょう!この記事を「微分の世界の地図」として、一歩ずつ着実に理解を深めていきませんか?
この記事の概要
- はじめに:微分ってなんだろう?
- 微分の基本ルール:全ての基礎
- 組み合わせ関数の微分:積・商・合成関数
- 関数別微分:指数・対数・三角関数など
- 応用テクニック:さらに微分を使いこなす
- まとめ:重要公式と学習のヒント
はじめに:微分ってなんだろう?
簡単に言うと、微分とは「ある瞬間の変化率(変化の勢い)」を求める操作です。
例えば、車の速度(位置の時間に対する変化率)や、グラフの特定の点での接線の傾き( $y$ の $x$ に対する変化率)などが、微分の考え方を使って求められます。
数学的には、関数 $y=f(x)$ の点 $x$ における変化率は、 $x$ をわずかに変化させたときの $y$ の変化量の比(平均変化率)の極限値として定義されます。これを導関数 (derivative) と呼び、$f'(x)$ や $\frac{dy}{dx}$ と書きます。
なぜ微分が重要なのでしょうか?
- 変化の予測: 未来の変化を予測するモデルを作る(人口増加、株価変動など)
- 最適化: 関数の最大値・最小値を見つける(コスト最小化、利益最大化など)
- 物理法則の記述: 速度、加速度、力などを数学的に表現する
このように、微分は変化を理解し、制御するための基本的な言語なのです。さあ、その言語を使いこなすための公式を見ていきましょう!
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微分の基本ルール:全ての基礎
1. 定数関数 (Constant Rule)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}(c) = 0 \]
( $c$ は定数)
- 説明: 定数(例: $5, -2, \pi$ など、$x$ を含まない数)を微分すると、常に 0 になります。変化しないので、変化率は 0 ということです。
- 例: $f(x) = 100$ なら、$f'(x) = 0$
2. べき関数 (Power Rule)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}(x^n) = nx^{n-1} \]
( $n$ は実数)
- 説明: $x$ の $n$ 乗の微分は、指数 $n$ を前に出し、指数を $1$ 減らします。これは $n$ が整数、分数、負の数でも成り立ちます。
- 例:
- $f(x) = x^5 \implies f'(x) = 5x^{5-1} = 5x^4$
- $f(x) = \sqrt{x} = x^{1/2} \implies f'(x) = \frac{1}{2}x^{\frac{1}{2}-1} = \frac{1}{2}x^{-1/2} = \frac{1}{2\sqrt{x}}$
- $f(x) = \frac{1}{x} = x^{-1} \implies f'(x) = -1x^{-1-1} = -x^{-2} = -\frac{1}{x^2}$
3. 定数倍 (Constant Multiple Rule)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}\{c \cdot f(x)\} = c \cdot \frac{d}{dx}f(x) = c f'(x) \]
- 説明: 関数に定数が掛かっている場合、定数はそのままにして、関数部分だけを微分します。
- 例: $y = 7x^3$ なら、$y’ = 7 \cdot \frac{d}{dx}(x^3) = 7 \cdot (3x^2) = 21x^2$
4. 和の法則 (Sum Rule)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}\{f(x) + g(x)\} = \frac{d}{dx}f(x) + \frac{d}{dx}g(x) = f'(x) + g'(x) \]
- 説明: 関数の足し算は、各項を個別に微分して、後で足し合わせます。
- 例: $y = x^2 + 3x$ なら、$y’ = \frac{d}{dx}(x^2) + \frac{d}{dx}(3x) = 2x + 3\frac{d}{dx}(x) = 2x + 3$
5. 差の法則 (Difference Rule)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}\{f(x) – g(x)\} = \frac{d}{dx}f(x) – \frac{d}{dx}g(x) = f'(x) – g'(x) \]
- 説明: 関数の引き算も同様に、各項を個別に微分して、後で引き算します。
- 例: $y = 5x^4 – 2x$ なら、$y’ = \frac{d}{dx}(5x^4) – \frac{d}{dx}(2x) = 5\frac{d}{dx}(x^4) – 2\frac{d}{dx}(x) = 5(4x^3) – 2(1) = 20x^3 – 2$
ポイント: これらの基本ルール(特に定数倍、和、差)のおかげで、多項式 $f(x) = a_n x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \dots + a_1 x + a_0$ は、各項をべき関数のルールで微分して足し合わせるだけで簡単に微分できます。
組み合わせ関数の微分:積・商・合成関数
6. 積の法則 (Product Rule)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}\{f(x)g(x)\} = f'(x)g(x) + f(x)g'(x) \]
- 説明: 2つの関数の「積(掛け算)」を微分するルール。「(前微分)×(後そのまま) + (前そのまま)×(後微分)」と覚えます。順番はどちらでもOKですが、この形が一般的です。
- 例: $y = x^3 e^x$ ($f(x)=x^3, g(x)=e^x$)
- $f'(x) = 3x^2$
- $g'(x) = e^x$ (指数関数の微分は後述)
- $y’ = (3x^2)(e^x) + (x^3)(e^x) = (3x^2 + x^3)e^x$
7. 商の法則 (Quotient Rule)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}\left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\} = \frac{f'(x)g(x) – f(x)g'(x)}{(g(x))^2} \]
(ただし $g(x) \neq 0$)
- 説明: 関数の「商(割り算)」、つまり分数形を微分するルール。「(分母2乗) 分の {(分子微分)×(分母そのまま) – (分子そのまま)×(分母微分)}」と覚えます。注意: 引き算の順番は変えられません!
- 例: $y = \frac{\sin x}{x}$ ($f(x)=\sin x, g(x)=x$)
- $f'(x) = \cos x$ (三角関数の微分は後述)
- $g'(x) = 1$
- $y’ = \frac{(\cos x)(x) – (\sin x)(1)}{x^2} = \frac{x \cos x – \sin x}{x^2}$
8. 合成関数の微分法則 (Chain Rule)
- 公式: $y = f(g(x))$ のとき、
\[ \frac{dy}{dx} = f'(g(x)) \cdot g'(x) \]
(または $\frac{dy}{dx} = \frac{dy}{du} \cdot \frac{du}{dx}$ ただし $u=g(x)$)
- 説明: これが微分における最重要ルールの一つです!関数の中に関数が入っている「入れ子構造(合成関数)」を微分します。「外側の関数を微分(中身はそのまま)したもの」に、「内側の関数の微分」を掛け合わせます。「外微分 × 中微分」と覚えましょう。
- 考え方: $u = g(x)$ とおくと、$y = f(u)$ です。$\frac{dy}{dx} = \frac{dy}{du} \cdot \frac{du}{dx}$ と書くこともできます。
- 例1: $y = (x^2+1)^3$
- 外側 $f(u) = u^3 \implies f'(u) = 3u^2$
- 内側 $g(x) = x^2+1 \implies g'(x) = 2x$
- $y’ = f'(g(x)) \cdot g'(x) = 3(x^2+1)^2 \cdot (2x) = 6x(x^2+1)^2$
- 例2: $y = e^{5x}$
- 外側 $f(u) = e^u \implies f'(u) = e^u$
- 内側 $g(x) = 5x \implies g'(x) = 5$
- $y’ = f'(g(x)) \cdot g'(x) = e^{5x} \cdot 5 = 5e^{5x}$
- 例3: $y = \sin(x^3)$
- 外側 $f(u) = \sin u \implies f'(u) = \cos u$
- 内側 $g(x) = x^3 \implies g'(x) = 3x^2$
- $y’ = f'(g(x)) \cdot g'(x) = \cos(x^3) \cdot (3x^2) = 3x^2 \cos(x^3)$
9. よく使う連鎖律: $(g(x))^n$ の微分
- 公式:
\[ \frac{d}{dx} (g(x))^n = n(g(x))^{n-1} \cdot g'(x) \]
- 説明: これは連鎖律の特に便利な形です。関数全体が $n$ 乗されている場合に使います。外側の $u^n$ を微分して $nu^{n-1}$ となり、それに内側の $g'(x)$ を掛けます。
- 例: $y = \sqrt{3x^2 + 5} = (3x^2+5)^{1/2}$
- $n = 1/2$
- $g(x) = 3x^2+5 \implies g'(x) = 6x$
- $y’ = \frac{1}{2}(3x^2+5)^{\frac{1}{2}-1} \cdot (6x) = \frac{1}{2}(3x^2+5)^{-1/2} \cdot (6x) = \frac{3x}{\sqrt{3x^2+5}}$
ポイント: 連鎖律は微分のあらゆる場面で登場します。関数の形を見て、「外側は何か?」「内側は何か?」を見抜く練習が重要です。
関数別微分:指数・対数・三角関数など
10. 指数関数 (Exponential Functions)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}(e^x) = e^x \]
( $e$ はネイピア数 $\approx 2.718$)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}(a^x) = a^x \ln a \]
( $a>0, a\neq 1$)
- 説明: $e^x$ は微分しても形が変わらない特別な関数です。一般の底 $a$ の場合は、$a^x$ に $\ln a$ (底 $a$ の自然対数) が付きます。
- 例:
- $y = e^{-x^2}$ (連鎖律使用: 内側 $g(x)=-x^2$, $g'(x)=-2x$)
$y’ = e^{-x^2} \cdot (-2x) = -2x e^{-x^2}$ - $y = 3^x \implies y’ = 3^x \ln 3$
- $y = e^{-x^2}$ (連鎖律使用: 内側 $g(x)=-x^2$, $g'(x)=-2x$)
11. 対数関数 (Logarithmic Functions)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}(\ln |x|) = \frac{1}{x} \]
( $x \neq 0$)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}(\log_a |x|) = \frac{1}{x \ln a} \]
( $x \neq 0, a>0, a\neq 1$)
- 説明: 自然対数 $\ln x$ の微分は $\frac{1}{x}$ というシンプルな形になります。一般の底 $a$ の場合は、分母に $\ln a$ が付きます。絶対値 $|x|$ が付いているのは、真数条件(対数の中身は正)を考慮し、 $x<0$ でも定義できるようにするためです。
- 例:
- $y = \ln(x^4+1)$ (連鎖律使用: 内側 $g(x)=x^4+1$, $g'(x)=4x^3$)
$y’ = \frac{1}{x^4+1} \cdot (4x^3) = \frac{4x^3}{x^4+1}$ - $y = \log_2 x \implies y’ = \frac{1}{x \ln 2}$
- $y = \ln(x^4+1)$ (連鎖律使用: 内側 $g(x)=x^4+1$, $g'(x)=4x^3$)
12. 三角関数 (Trigonometric Functions)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}(\sin x) = \cos x \]\[ \frac{d}{dx}(\cos x) = -\sin x \]\[ \frac{d}{dx}(\tan x) = \sec^2 x = \frac{1}{\cos^2 x} \]\[ \frac{d}{dx}(\cot x) = -\csc^2 x = -\frac{1}{\sin^2 x} \]\[ \frac{d}{dx}(\sec x) = \sec x \tan x \]\[ \frac{d}{dx}(\csc x) = -\csc x \cot x \]
- 説明: それぞれの三角関数の導関数です。特に $\sin$ と $\cos$ は微分すると互いに入れ替わる(符号に注意)という性質があります。$\tan, \cot, \sec, \csc$ は $\sin, \cos$ と商の法則から導出できます。( $\sec x = 1/\cos x$, $\csc x = 1/\sin x$, $\cot x = 1/\tan x$ )
- 例: $y = x \cos x$ (積の法則使用)
$y’ = \frac{d}{dx}(x) \cdot (\cos x) + (x) \cdot \frac{d}{dx}(\cos x) = 1 \cdot \cos x + x \cdot (-\sin x) = \cos x – x \sin x$
13. 逆三角関数 (Inverse Trigonometric Functions)
- 公式:
\[ \frac{d}{dx}(\arcsin x) = \frac{1}{\sqrt{1-x^2}} \quad (-1 < x < 1) \]\[ \frac{d}{dx}(\arccos x) = -\frac{1}{\sqrt{1-x^2}} \quad (-1 < x < 1) \]\[ \frac{d}{dx}(\arctan x) = \frac{1}{1+x^2} \]\[ \frac{d}{dx}(\text{arccot } x) = -\frac{1}{1+x^2} \]\[ \frac{d}{dx}(\text{arcsec } x) = \frac{1}{|x|\sqrt{x^2-1}} \quad (|x| > 1) \]\[ \frac{d}{dx}(\text{arccsc } x) = -\frac{1}{|x|\sqrt{x^2-1}} \quad (|x| > 1) \]
- 説明: $\arcsin x$ は $\sin y = x$ となる角度 $y$ を意味します ($\sin^{-1} x$ とも書きます)。微分すると代数関数(ルートや分数式)になるのが特徴です。定義域に注意してください。主に角度計算などで利用されます。
- 例: $y = \arctan(x/2)$ (連鎖律使用: 内側 $g(x)=x/2$, $g'(x)=1/2$)
$y’ = \frac{1}{1+(x/2)^2} \cdot \frac{1}{2} = \frac{1}{1+x^2/4} \cdot \frac{1}{2} = \frac{1}{\frac{4+x^2}{4}} \cdot \frac{1}{2} = \frac{4}{4+x^2} \cdot \frac{1}{2} = \frac{2}{4+x^2}$
(発展) 双曲線関数と逆双曲線関数
高校範囲を超えることが多いですが、理工学系ではよく使われます。
- 双曲線関数: $\frac{d}{dx}(\sinh x) = \cosh x$, $\frac{d}{dx}(\cosh x) = \sinh x$, $\frac{d}{dx}(\tanh x) = \text{sech}^2 x$, etc.
- 逆双曲線関数: $\frac{d}{dx}(\text{arsinh } x) = \frac{1}{\sqrt{x^2+1}}$, $\frac{d}{dx}(\text{arcosh } x) = \frac{1}{\sqrt{x^2-1}}$, etc.
応用テクニック:さらに微分を使いこなす
14. 高階微分 (Higher-Order Derivatives)
- 概念: 関数を繰り返し微分すること。
- 1回微分: $f'(x)$ (速度、傾き)
- 2回微分: $f”(x) = \frac{d}{dx}(f'(x))$ (加速度、グラフの凹凸)
- 3回微分: $f”'(x) = \frac{d}{dx}(f”(x))$
- n回微分: $f^{(n)}(x) = \frac{d^n}{dx^n}f(x)$
- 例: $f(x) = x^4 – 3x^2$
- $f'(x) = 4x^3 – 6x$
- $f”(x) = 12x^2 – 6$
- $f”'(x) = 24x$
- $f^{(4)}(x) = 24$
- $f^{(5)}(x) = 0$
15. 陰関数微分 (Implicit Differentiation)
- 使う場面: $x^2 + y^2 = 1$ のように、$y = \dots$ の形に簡単にできない(またはしたくない)関数 $F(x, y) = 0$ の $\frac{dy}{dx}$ を求めたいとき。
- 手順:
- 方程式の両辺を $x$ で微分する ($\frac{d}{dx}$ を作用させる)。
- $y$ の項を微分するときは、$y$ を $x$ の関数とみなし、連鎖律を使う(例: $\frac{d}{dx}(y^n) = ny^{n-1}\frac{dy}{dx}$)。
- 得られた式を $\frac{dy}{dx}$ について解く。
- 例: $x^3 + y^3 = 6xy$ の $\frac{dy}{dx}$ を求める。
- 両辺を $x$ で微分: $\frac{d}{dx}(x^3) + \frac{d}{dx}(y^3) = \frac{d}{dx}(6xy)$
- $3x^2 + 3y^2 \frac{dy}{dx} = 6\left(\frac{d}{dx}(x) \cdot y + x \cdot \frac{d}{dx}(y)\right)$ (右辺は積の法則)
- $3x^2 + 3y^2 \frac{dy}{dx} = 6\left(1 \cdot y + x \cdot \frac{dy}{dx}\right)$
$3x^2 + 3y^2 y’ = 6y + 6x y’$ ( $y’ = \frac{dy}{dx}$ と書いた)
$3y^2 y’ – 6x y’ = 6y – 3x^2$
$(3y^2 – 6x) y’ = 6y – 3x^2$
$y’ = \frac{6y – 3x^2}{3y^2 – 6x} = \frac{2y – x^2}{y^2 – 2x}$
16. 対数微分法 (Logarithmic Differentiation)
- 使う場面:
- $y = x^{\sin x}$ のように、$(f(x))^{g(x)}$ の形になっているとき。
- $y = \frac{(x+1)^2 \sqrt{x-2}}{(x+3)^4}$ のように、多くの因子が複雑に掛け算・割り算・べき乗されているとき。
- 手順:
- 両辺の自然対数をとる ($\ln y = \dots$)。対数の性質 $\ln(AB)=\ln A + \ln B$, $\ln(A/B)=\ln A – \ln B$, $\ln(A^p)=p \ln A$ を使って右辺を簡単にする。
- 両辺を $x$ で微分する。左辺は $(\ln y)’ = \frac{1}{y}\frac{dy}{dx}$ となる(連鎖律)。
- $\frac{dy}{dx}$ について解く(最後に $y$ を元の関数 $y=f(x)$ に戻す)。
- 例: $y = x^{\sin x}$ ($x>0$) を微分する。
- $\ln y = \ln(x^{\sin x}) = (\sin x)(\ln x)$
- 両辺を $x$ で微分: $\frac{d}{dx}(\ln y) = \frac{d}{dx}((\sin x)(\ln x))$
$\frac{1}{y}\frac{dy}{dx} = \frac{d}{dx}(\sin x) \cdot (\ln x) + (\sin x) \cdot \frac{d}{dx}(\ln x)$ (積の法則)
$\frac{1}{y} y’ = (\cos x)(\ln x) + (\sin x)(\frac{1}{x})$ - $y’ = y \left( \cos x \ln x + \frac{\sin x}{x} \right)$
$y’ = x^{\sin x} \left( \cos x \ln x + \frac{\sin x}{x} \right)$
17. 媒介変数表示された関数の微分 (Parametric Differentiation)
- 使う場面: $x$ と $y$ が直接関係づけられず、両方とも別の変数 $t$(媒介変数 or パラメータ)の関数 $x=f(t), y=g(t)$ として表されているとき、$\frac{dy}{dx}$ を求めたい場合。
- 公式:
\[ \frac{dy}{dx} = \frac{dy/dt}{dx/dt} = \frac{g'(t)}{f'(t)} \]
- 説明: $y$ を $t$ で微分したもの を $x$ を $t$ で微分したもの で割ります。
- 例: 円 $x = r \cos t$, $y = r \sin t$ ($r$ は定数) の傾き $\frac{dy}{dx}$ を求める。
- $\frac{dx}{dt} = -r \sin t$
- $\frac{dy}{dt} = r \cos t$
- $\frac{dy}{dx} = \frac{r \cos t}{-r \sin t} = -\frac{\cos t}{\sin t} = -\cot t$
(発展) ライプニッツの公式 (Leibniz Rule)
積の法則を $n$ 回微分に拡張した公式です。組み合わせ記号 $\binom{n}{k} = \frac{n!}{k!(n-k)!}$ を使います。
発展:多変数への扉 – 偏微分
これまでは $y$ が一つの変数 $x$ の関数 $y=f(x)$ である場合(一変数関数)を考えてきました。しかし、世の中には複数の要因で結果が決まる現象が多くあります。例えば、気温 $T$ が場所 $(x, y)$ によって決まる $T = f(x, y)$ のような場合(多変数関数)です。
このような多変数関数では、偏微分 (Partial Derivative) という考え方を使います。これは、「他の変数は固定(定数とみなす)して、注目する一つの変数だけで微分する」という操作です。偏微分記号 $\partial$ を使います。
- $f(x, y)$ を $x$ で偏微分: $\frac{\partial f}{\partial x}$ または $f_x$
- $f(x, y)$ を $y$ で偏微分: $\frac{\partial f}{\partial y}$ または $f_y$
例: $f(x, y) = x^2 y^3 + 3x$
- $x$ で偏微分 ($\boldsymbol{y}$ は定数扱い):
\[ \frac{\partial f}{\partial x} = \frac{\partial}{\partial x}(x^2 y^3) + \frac{\partial}{\partial x}(3x) = y^3 \frac{\partial}{\partial x}(x^2) + 3\frac{\partial}{\partial x}(x) = y^3(2x) + 3(1) = 2xy^3 + 3 \]
- $y$ で偏微分 ($\boldsymbol{x}$ は定数扱い):
\[ \frac{\partial f}{\partial y} = \frac{\partial}{\partial y}(x^2 y^3) + \frac{\partial}{\partial y}(3x) = x^2 \frac{\partial}{\partial y}(y^3) + 0 = x^2(3y^2) = 3x^2 y^2 \]
偏微分は、多変数関数の変化を理解する第一歩であり、勾配 $\nabla f = (\frac{\partial f}{\partial x}, \frac{\partial f}{\partial y})$ 、全微分 $dz = \frac{\partial f}{\partial x} dx + \frac{\partial f}{\partial y} dy$ 、重積分など、さらに高度な微積分の世界へと繋がっていきます。
まとめ:重要公式と学習のヒント
この記事では、微分の基本的なルールから応用テクニックまで、主要な公式とその使い方を解説してきました。最後に、特に重要な公式をいくつか振り返りましょう。
【最重要】基本ルール:
- べき関数: $\frac{d}{dx}(x^n) = nx^{n-1}$
- 線形性: $\frac{d}{dx}(af(x) + bg(x)) = a f'(x) + b g'(x)$
【最重要】組み合わせルール:
- 積: $(fg)’ = f’g + fg’$
- 商: $\left(\frac{f}{g}\right)’ = \frac{f’g – fg’}{g^2}$
- 連鎖律: $\frac{d}{dx}f(g(x)) = f'(g(x))g'(x)$ (特に $\frac{d}{dx}(g(x))^n = n(g(x))^{n-1}g'(x)$)
【重要】基本関数:
- $\frac{d}{dx}(e^x) = e^x$
- $\frac{d}{dx}(\ln |x|) = \frac{1}{x}$
- $\frac{d}{dx}(\sin x) = \cos x$
- $\frac{d}{dx}(\cos x) = -\sin x$
- $\frac{d}{dx}(\arctan x) = \frac{1}{1+x^2}$
微分学習のヒント:
- 公式を覚える: まずは基本的な公式、特に上記の重要公式を確実に覚えましょう。
- 手を動かす: たくさんの問題を解いて、公式の使い方に慣れることが最も重要です。簡単な問題から始め、徐々に複雑な問題に挑戦しましょう。
- 連鎖律を制覇する: 連鎖律は微分の核となるルールです。「外側は何か?」「内側は何か?」を意識して、適用する練習を繰り返しましょう。
- 意味を考える: 公式を丸暗記するだけでなく、「微分が何を表しているのか(変化率、接線の傾きなど)」を常に意識すると、理解が深まります。
- 間違えから学ぶ: 計算ミスは誰にでもあります。どこで間違えたのかを分析し、同じミスを繰り返さないようにすることが大切です。
微分は、練習すれば必ず身につくスキルです。この記事が、あなたの微分学習の一助となれば幸いです。
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参考文献の推奨:
より深く学びたい方は、標準的な微積分の教科書(例:裳華房、サイエンス社、共立出版などから出版されているもの)や、信頼できるオンラインリソース(例:Khan Academy 日本語版、大学の公開教材など)を参照することをお勧めします。
免責事項:
本記事は微分の基本的な公式とテクニックを解説するものであり、数学的な厳密性よりも分かりやすさを優先している箇所があります。正確な定義や証明については、専門の教科書等をご参照ください。計算例には細心の注意を払っていますが、万一誤りがあった場合はご容赦ください。この記事の数式はLaTeX形式で記述されており、表示にはMathJaxなどのJavaScriptライブラリが必要です。