【短篇小説】時をかける温泉街、心の欠片を拾い集めて|地獄谷野猿公苑

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第1章 名古屋から松本城へ、亡き祖母との思い出を辿る旅の始まり

ユキは、手帳に挟まれた一枚の写真を見つめていた。そこに写っているのは、優しい笑顔を浮かべる祖母と、幼い頃のユキ。二人は、満開の桜の下で、寄り添うように座っている。背景には、黒と白のコントラストが美しい、雄大な城がそびえ立っていた。

「おばあちゃん…」

ユキは、小さく呟いた。祖母が亡くなってから、もうすぐ一年が経とうとしていた。祖母は、ユキにとって、母親代わりの存在だった。幼い頃に両親を亡くしたユキを、祖母はいつも温かく包み込んでくれた。

祖母は、歴史が好きで、特に、松本城がお気に入りだった。毎年春になると、二人で松本城へ行き、桜を見るのが恒例行事だった。祖母は、城の歴史や、城にまつわるエピソードを、ユキに語って聞かせた。ユキは、祖母の話を聞くのが大好きだった。

しかし、昨年の春、祖母は病に倒れ、帰らぬ人となった。ユキは、深い悲しみに打ちひしがれた。祖母との思い出が詰まった松本城へ行くことも、できなくなってしまった。

ユキは、デザイン会社で働いていた。仕事は忙しく、やりがいもあったが、心の中には、いつもぽっかりと穴が開いたような空虚感があった。祖母を失った悲しみは、時間が経っても癒えることはなかった。

そんなある日、ユキは、会社の同僚から、長野県の渋温泉の話を聞いた。野生の猿が温泉に入ることで有名な場所があるという。ユキは、その話を聞いて、ふと、祖母との思い出が蘇ってきた。

「そうだ、温泉に行こう…」

ユキは、そう決意した。祖母との思い出の場所である松本城を訪れ、そして、渋温泉で、心と体を癒そう。それが、今のユキにできる、唯一のことのように思えた。

ユキは、週末を利用して、三日間の旅行を計画した。名古屋駅で、特急の切符を購入する。窓口の女性に「松本まで」と告げると、ユキの声は、少し震えていた。

出発の朝、ユキは、祖母の写真が入ったペンダントを胸に下げた。

「おばあちゃん、一緒に行こうね。」

ユキは、心の中で、そう呟いた。

名古屋駅のホームは、旅行客で賑わっていた。ユキは、指定された席に座り、窓の外を眺める。電車が動き出すと、ユキの心臓は、高鳴りを増した。

「行ってきます…」

ユキは、誰に言うでもなく、小さく呟いた。電車は、ユキを乗せて、ゆっくりと動き出した。窓の外には、都会の景色が広がっている。ユキは、その景色を、ぼんやりと眺めていた。

これから始まる旅が、ユキにとって、どのようなものになるのか、まだ分からない。しかし、ユキは、この旅が、きっと、自分にとって、何か大切なものを与えてくれると信じていた。

…2章に続く

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