営業費用がスッキリわかる!損益計算書(PL)の見方と分析のコツを事例でやさしく解説

株式投資メモ

営業費用とは?PLの重要項目を徹底解剖!あなたの会社は大丈夫?事例で学ぶ分析術

「決算書って、数字ばっかりで何を見たらいいの…?」「営業費用って言葉は聞くけど、結局うちの会社にとってどういう意味があるの?」

そんな悩みを抱えていませんか?企業の成績表とも言える「損益計算書(PL)」。その中でも「営業費用」は、会社の稼ぐ力を左右する超重要項目です。しかし、その本質や分析方法を正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。

この記事を読めば、あなたはもう営業費用を前にして怯むことはありません。営業費用の基本の「キ」から、分かりやすく、そして詳しく解説します。

この記事であなたが得られること:

  • 営業費用の正体と、なぜそれが企業の命運を握るのかがスッキリ理解できる!
  • 複雑に見える営業費用の内訳も、具体的な事例でストンと腑に落ちる!
  • 「うちの会社の営業費用、これって適正なの?」その疑問に答える分析手法が身につく!
  • 営業費用とキャッシュフローの関係性を読み解き、企業の真の体力を見抜けるようになる!

 

 

  1. 簡単な記事の概要
  2. 1. そもそも「営業費用」って何?超基本を理解しよう
  3. 2. 営業費用の内訳を大解剖!「販売費」と「一般管理費」って具体的に何?
    1. 販売費:モノやサービスを「売るため」のコスト
    2. 一般管理費:会社全体を「運営・管理するため」のコスト
  4. 3. なぜ営業費用がこんなに重要?企業経営のココを見抜け!
    1. (1) 企業の「本業での稼ぐ力」を測る最重要指標!
    2. (2) コスト管理能力のバロメーター
    3. (3) 経営戦略が透けて見える!
    4. (4) 同業他社との比較で自社の立ち位置がわかる!
  5. 4. 【重要ポイント】設備投資と営業費用の関係~減価償却費の謎を解く~
    1. 減価償却とは?なぜ必要なの?
    2. 減価償却費は、営業費用の一部(主に一般管理費)になる!
  6. 5. 営業費用とキャッシュフロー計算書の合わせ技!企業の「本当の体力」を見抜く
    1. 営業利益と「営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)」の差に注目!
      1. 【ケーススタディで理解!】 IT企業A社のケース
    2. 設備投資(投資CF)と減価償却費(営業費用)の関係を再確認
    3. フリーキャッシュフロー(FCF)で企業の真の実力がわかる
  7. 6. 【実践編】営業費用の分析ステップと着眼点
    1. ステップ1:時系列で比較する(過去との比較)
    2. ステップ2:売上高とのバランスを見る(収益性分析)
    3. ステップ3:構成比を見る(何に重点を置いているか)
    4. ステップ4:同業他社と比較する(ベンチマーキング)
      1. 【ケーススタディで分析!】 老舗製造業B社のケース
  8. 7. 営業費用を見る上での注意点・落とし穴
  9. まとめ:営業費用を制する者は、ビジネスを制す!
  10. たび友|サイトマップ

簡単な記事の概要

この記事では、まず「営業費用とは何か?」という基本的な定義から、その内訳である「販売費及び一般管理費(販管費)」の具体的な項目までを丁寧に解説します。次に、なぜ営業費用が企業経営においてこれほど重要視されるのか、その理由を深掘り。さらに、設備投資との関係や、キャッシュフロー計算書と合わせて読むことで見えてくる企業のリアルな姿についても触れていきます。具体例やケーススタディを交えながら、営業費用の全てを網羅的に、かつ実践的に解説していきます。

1. そもそも「営業費用」って何?超基本を理解しよう

まずは基本から押さえましょう。会社の活動は、売上を上げること(収益活動)と、そのために色々とお金を使うこと(費用活動)の繰り返しです。

営業費用とは、企業が「本業で」収益を得るために使った費用のことを指します。

損益計算書(PL)では、以下の流れで「営業利益」を計算する際に登場します。

売上高(本業で得た収益)
– 売上原価(売れた商品やサービスの直接的な仕入れ・製造コスト)
= 売上総利益(粗利益とも。商品・サービスの基本的な儲け)
営業費用(販売費及び一般管理費) ← コレ!
= 営業利益(本業で稼いだ最終的な利益)

つまり、営業費用は、企業がメインのビジネスを運営していくために必要不可欠なコスト群なのです。これが大きすぎれば利益を圧迫しますし、逆に適切にコントロールできれば利益を最大化できます。

「販売費及び一般管理費(販管費)」とも呼ばれるのはなぜ?

営業費用は、その性質から大きく「販売費」と「一般管理費」の2つに分けられるため、これらを合わせて「販売費及び一般管理費(販管費:はんかんひ)」と呼ぶのが一般的です。決算書ではこの「販売費及び一般管理費」という科目名で表示されていることがほとんどです。(※営業費用は定義や方式により異なる場合があります。)

2. 営業費用の内訳を大解剖!「販売費」と「一般管理費」って具体的に何?

では、営業費用(販管費)の中身を具体的に見ていきましょう。ここを理解すると、企業の活動内容がより鮮明に見えてきます。

販売費:モノやサービスを「売るため」のコスト

販売費は、文字通り商品やサービスを顧客に販売するために直接かかる費用です。攻めの費用とも言えるでしょう。

  • 広告宣伝費:
    テレビCM、新聞・雑誌広告、インターネット広告(リスティング広告、SNS広告など)、チラシ作成費用など。
    新製品の発売に合わせて大規模なテレビCMを打った場合、ここに計上されます。
  • 販売促進費:
    キャンペーン費用、景品・ノベルティ費用、店頭POP作成費用、展示会出展費用など。
    購入者へのプレゼントキャンペーンや、期間限定の割引セールの費用など。
  • 荷造運搬費:
    商品の梱包材料費、配送業者への委託料、自社トラックの燃料費(販売活動に伴うもの)など。
    ECサイトで売れた商品を顧客に発送するための段ボール代や配送料。
  • 販売手数料(支払手数料):
    販売代理店や外部の営業担当者に支払うコミッション、クレジットカード決済手数料など。
    不動産仲介業者が販売成約時に他の業者に支払う手数料。
  • 給料手当(販売部門):
    営業部門の社員の給与、賞与、諸手当など。
    営業マンの月給やインセンティブボーナス。
  • 旅費交通費(販売部門):
    営業担当者が顧客訪問や出張に使う交通費、宿泊費など。
  • その他販売諸掛:
    上記に当てはまらない販売活動に関する細かな費用。

これらの費用が多い企業は、それだけ販売活動に力を入れている(あるいは、かけざるを得ない)と推測できます。

一般管理費:会社全体を「運営・管理するため」のコスト

一般管理費は、企業全体の事業活動を円滑に進めるために必要な、間接的な管理部門の費用です。守りの費用、あるいは企業活動の土台となる費用とも言えます。特定の製品やサービスに直接紐づけるのが難しい費用群です。

  • 役員報酬:
    取締役や監査役など、役員に対して支払われる報酬。
  • 給料手当(管理部門):
    社長室、経理部、人事部、総務部、情報システム部など、管理部門の社員の給与、賞与、諸手当。
  • 地代家賃:
    本社ビル、事務所、工場(管理部門が使用する部分)などの賃借料。
    都心の一等地に本社を構える企業の高額なオフィス賃料。
  • 減価償却費:
    建物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、ソフトウェアなどの固定資産の取得価額を、その耐用年数にわたって規則的に費用として配分した金額。
    重要ポイント: 実際に現金が出ていくわけではない「非現金支出費用」の代表格です。これについては後ほど詳しく解説します。
  • 水道光熱費:
    事務所や工場(管理部門が使用する部分)の電気代、水道代、ガス代など。
  • 通信費:
    電話料金、インターネット接続料、郵便料金、社内ネットワーク維持費など。
  • 租税公課:
    固定資産税、都市計画税、自動車税、印紙税、事業所税など、税金や公的な負担金(法人税、住民税、事業税は営業費用ではなく、税引前当期純利益から控除されます)。
  • 研究開発費:
    新製品や新技術の研究・開発にかかる費用(人件費、材料費、外部委託費など)。会計基準によっては売上原価に算入されるケースもありますが、一般管理費として処理されることも多いです。
    製薬会社の新薬開発のための臨床試験費用や、IT企業の新しいソフトウェア開発費用。
  • 採用教育費:
    従業員の採用活動にかかる費用(求人広告費、会社説明会費用など)や、入社後の研修費用、資格取得支援費用など。
  • 消耗品費:
    文房具、コピー用紙、トナーなど、比較的少額で短期間に消費される物品の費用。
  • 支払報酬(コンサルタント等):
    弁護士、税理士、コンサルタントなど外部専門家への報酬。
  • その他:
    諸会費(業界団体への会費など)、会議費、新聞図書費など。

一般管理費は、企業規模が大きくなるほど、また管理体制が複雑になるほど増加する傾向があります。

3. なぜ営業費用がこんなに重要?企業経営のココを見抜け!

営業費用をただの「コスト」と捉えるだけではもったいない!ここを深掘りすることで、企業の経営戦略や体質まで見えてくるのです。

(1) 企業の「本業での稼ぐ力」を測る最重要指標!

営業利益は「売上総利益 – 営業費用」で計算されます。つまり、営業費用をいかに効率的にコントロールできるかが、本業での儲け(営業利益)を最大化する鍵となります。

  • 売上高営業利益率(営業利益 ÷ 売上高): この比率が高いほど、本業で効率よく稼いでいる証拠。営業費用の適正化がこの比率改善に直結します。

(2) コスト管理能力のバロメーター

営業費用の推移や内訳を分析することで、企業がどれだけ無駄なく経営できているか(コスト意識が高いか)が見えてきます。

  • 売上高販管費率(販管費 ÷ 売上高): 売上に対して販管費がどれくらいかかっているかを示す指標。これが低いほど効率が良いと言えますが、低ければ良いというものでもありません。必要な投資まで削ってしまうと、将来の成長を損なう可能性があります。

「多くの成長企業は、一時的に販管費率が上昇することがあります。これは将来のための人材投資やマーケティング投資を積極的に行っている証左であり、一概にネガティブとは言えません。重要なのは、その投資が将来の売上や利益に繋がっているかという点です。」

(3) 経営戦略が透けて見える!

営業費用のどの項目に重点的にお金を使っているかで、その企業が今何を目指しているのか、どんな戦略を取っているのかを読み解くヒントになります。

  • 広告宣伝費の増加: 新製品投入、市場シェア拡大を狙っている可能性。
  • 研究開発費の増加: 将来の成長の種となる新技術・新製品開発に注力している可能性。
  • 採用教育費の増加: 事業拡大に伴う人材確保や、従業員のスキルアップに積極的な可能性。
  • 地代家賃の増加: 事業規模拡大に伴うオフィス拡張や、好立地への移転によるブランドイメージ向上戦略の可能性。

(4) 同業他社との比較で自社の立ち位置がわかる!

同じ業界のライバル企業と営業費用の内訳や売上高販管費率を比較することで、自社の強みや弱み、改善すべき点が見えてきます。

例:同業他社より人件費率が高い場合、業務効率に課題があるのか、あるいは高待遇で優秀な人材を確保しているのか、といった分析が可能です。

4. 【重要ポイント】設備投資と営業費用の関係~減価償却費の謎を解く~

ここで多くの方が疑問に思うのが、「大きな機械を買ったり、新しいビルを建てたりしたら、そのお金は営業費用になるの?」という点です。

結論から言うと、建物建設費や機械購入費などの「設備投資」の支出そのものは、一括で営業費用にはなりません。

これらは将来長期間にわたって収益獲得に貢献する「固定資産」として、まず貸借対照表の「資産の部」に計上されます。

では、いつ費用になるのか?ここで登場するのが「減価償却(げんかしょうきゃく)」という考え方です。

減価償却とは?なぜ必要なの?

固定資産は、使っていくうちに徐々に価値が減少していきます(老朽化、陳腐化など)。この価値の減少分を、その資産が使える期間(耐用年数)にわたって、毎期少しずつ費用として計上していく会計処理が減価償却です。

なぜ減価償却が必要なの?

  • 適正な期間損益計算のため: もし高額な設備投資の全額を購入した期に費用計上してしまうと、その期だけ利益が極端に少なくなり、翌期以降は費用が計上されず利益が過大に見えてしまいます。これでは、毎期の正しい経営成績を把握できません。減価償却は、資産が生み出す収益と、それに対応する費用を適切に対応させる(収益費用対応の原則)ために行われます。
  • 財産価値の適正な評価のため: 貸借対照表の固定資産の価値を、時の経過による価値減少を反映した適正な金額で表示するためです。

減価償却費は、営業費用の一部(主に一般管理費)になる!

こうして計算された「減価償却費」が、損益計算書の営業費用(多くは一般管理費)に計上されます。

例で理解しよう!

ある会社が1,000万円の機械を現金で購入し、この機械の耐用年数が5年だとします(定額法で償却、残存価額ゼロと仮定)。

  1. 購入時: 現金1,000万円が減少し、貸借対照表に「機械装置」1,000万円が資産として計上されます。この時点では損益計算書に費用は計上されません。
  2. 毎年の決算時(5年間):
    • 減価償却費:1,000万円 ÷ 5年 = 200万円
    • この200万円が、毎年「減価償却費」として営業費用(一般管理費)に計上されます。
    • 貸借対照表の「機械装置」の価値は、毎年200万円ずつ減っていきます(減価償却累計額として間接的に控除)。

ポイント:減価償却費は現金の支出を伴わない費用

減価償却費は会計上の費用ですが、実際にその期に現金が出ていくわけではありません(現金支出は資産購入時に済んでいます)。この点は、後述するキャッシュフロー計算書との関連で非常に重要になります。

5. 営業費用とキャッシュフロー計算書の合わせ技!企業の「本当の体力」を見抜く

損益計算書で「営業利益が出ているから安心!」と考えるのは早計かもしれません。会計上の利益と、実際に手元に残るお金(キャッシュ)は必ずしも一致しないからです。ここで役立つのが「キャッシュフロー計算書」です。

営業利益と「営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)」の差に注目!

  • 営業利益: 会計上のルールに基づいて計算された、本業の利益。
  • 営業活動によるキャッシュフロー(営業CF): 本業によって実際にどれだけ現金が増減したかを示す。

この2つを比較することで、「利益の質」が見えてきます。

なぜ差が出るの?主な要因はコレ!

  1. 減価償却費:
    • 損益計算書では費用(営業費用)として利益を押し下げますが、実際の現金支出はありません。
    • キャッシュフロー計算書(間接法)では、税引前当期純利益に「加算」して調整されます。
    • つまり、減価償却費が大きいほど、営業利益よりも営業CFの方が大きくなる傾向があります。
  2. 運転資本の増減: 運転資本とは、日々の事業活動を回していくために必要な資金のこと。具体的には「売上債権(売掛金など)」「棚卸資産(在庫)」「仕入債務(買掛金など)」の増減が営業CFに影響します。
    • 売上債権の増加: 売上は計上された(利益は出た)けど、まだ代金が回収できていない状態。現金は入ってきていないので、営業CFにはマイナスに働きます。

      例:たくさん売れたけど、その多くがツケ(売掛金)で、手元にお金がない状態。

    • 棚卸資産の増加: 在庫が増えたということは、商品を仕入れたり作ったりするためにお金を使った(または将来使う約束をした)のに、まだ売れていない状態。営業CFにはマイナスに働きます。

      例:売れると見込んで大量に仕入れたけど、売れ残って在庫の山になっている状態。

    • 仕入債務の減少: 買掛金などを支払ったということ。現金が出ていくので、営業CFにはマイナスに働きます。逆に仕入債務が増加すれば、支払いを先延ばしにしているので営業CFにはプラスに働きます。

【ケーススタディで理解!】 IT企業A社のケース

  • A社は急成長中のIT企業。損益計算書では大きな営業利益を計上。
  • しかし、営業CFを見ると、営業利益よりもかなり少ない…。
  • 原因分析:
    • 急成長に伴い、顧客への請求から入金までの期間が長い大口案件が増え、売上債権が急増していた。
    • さらなる成長を見込んで積極的にエンジニアを採用し、人件費(営業費用)が増加していたが、一部は賞与引当金など未払いのものもあった。
    • 新しいオフィスに移転し、地代家賃(営業費用)が増加したが、敷金・保証金の支出は投資CFに影響。
    • サーバーなどの設備投資も積極的で、減価償却費(営業費用)も年々増加していた。

このケースでは、利益は出ているものの、売掛金の回収が進まないと資金繰りが苦しくなる可能性があること(黒字倒産の種)、成長のための投資がキャッシュを圧迫している状況が読み取れます。

設備投資(投資CF)と減価償却費(営業費用)の関係を再確認

キャッシュフロー計算書の「投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)」を見ると、企業がどれだけ設備投資(固定資産の取得)にお金を使ったかが分かります(通常、マイナスで表示)。

  • 損益計算書の営業費用に含まれる「減価償却費」は、過去の設備投資の結果として費用化されているものです。
  • 投資CFで大きなマイナス(=多額の設備投資)が続いている場合、将来的に減価償却費が増加し、営業利益を圧迫する可能性があることを頭に入れておく必要があります。ただし、その投資が将来の大きな収益を生むのであれば問題ありません。

フリーキャッシュフロー(FCF)で企業の真の実力がわかる

フリーキャッシュフロー(FCF)とは、企業が本業で稼いだキャッシュ(営業CF)から、事業を維持・成長させるために必要な設備投資(投資CFの一部)を差し引いた、企業が自由に使える現金のことです。

  • 簡易的な計算式: FCF = 営業CF – 投資CF (より厳密には、投資CFの中から事業維持に必要な設備投資額を差し引きます)

FCFが潤沢であれば、借入金の返済、株主への配当、新規事業への投資などを積極的に行うことができます。損益計算書で利益が出ていても、FCFがマイナス続きだと、資金調達に奔走する必要が出てくるかもしれません。

6. 【実践編】営業費用の分析ステップと着眼点

では、実際に企業の営業費用を分析する際の具体的なステップと見るべきポイントを見ていきましょう。

ステップ1:時系列で比較する(過去との比較)

過去数年間の営業費用の総額、および主要な費目の金額と対売上高比率の推移を見ます。

着眼点:

  • 急激に増減している費目はないか?その原因は何か?(例:新規事業立ち上げで広告宣伝費が急増、リストラで人件費が減少など)
  • 売上高の伸び以上に営業費用が伸びていないか?(利益率を圧迫している可能性)
  • 売上高が減少しているのに、固定費的な営業費用(地代家賃、減価償却費など)が削減できていないか?

ステップ2:売上高とのバランスを見る(収益性分析)

売上高販管費率(販管費 ÷ 売上高 × 100%) を計算し、その推移を見ます。

着眼点:

  • この比率が上昇傾向なら、収益性が悪化している可能性があります。その要因は、売上の伸び悩みか、費用の増加か、あるいはその両方か。
  • ただし、前述の通り、戦略的な投資(広告宣伝費や研究開発費の増加)によって一時的に上昇することもあるため、その中身を吟味する必要があります。

ステップ3:構成比を見る(何に重点を置いているか)

営業費用(販管費)全体に占める各費目の割合(構成比)を見ます。

着眼点:

  • 人件費の割合が高いか? 広告宣伝費か? 研究開発費か?
  • その企業のビジネスモデルや戦略と整合性が取れているか?(例:研究開発型企業なのに研究開発費の割合が極端に低い、など)

ステップ4:同業他社と比較する(ベンチマーキング)

可能であれば、同じ業界の競合他社の営業費用の構造や各種比率と比較します。

着眼点:

  • 自社の販管費率は業界平均と比べて高いか低いか?
  • 特定の費目が他社より突出して高い(または低い)場合、その理由は何か?(効率性、戦略の違い、ビジネスモデルの違いなど)

【ケーススタディで分析!】 老舗製造業B社のケース

  • B社は長年安定経営を続けてきたが、近年、海外の競合製品の台頭で売上が伸び悩んでいる。
  • 分析結果:
    1. 時系列比較: 売上高は微減傾向なのに、営業費用の総額はほぼ横ばい。特に、古い工場の減価償却費修繕費(一般管理費)が高止まり。
    2. 売上高販管費率: 上昇傾向にあり、営業利益率を圧迫。
    3. 構成比: 減価償却費と人件費の割合が高い。一方で、新製品開発のための研究開発費や、市場開拓のための広告宣伝費は低い水準。
    4. 同業他社比較: 新興の競合他社は、最新設備への投資で減価償却費の対売上高比率はB社より高いものの、生産効率が良く、売上原価率が低い。また、マーケティング費用を積極的に投下し、売上を伸ばしている。
  • B社への示唆:
    • 老朽化した設備の刷新による生産性向上とコスト削減の必要性。
    • 将来のための研究開発投資やマーケティング戦略の見直し。
    • 固定費構造の見直し(場合によっては事業再編も視野に)。

7. 営業費用を見る上での注意点・落とし穴

営業費用を分析する際には、いくつか注意しておきたい点があります。

  • 一時的な費用の影響:

    大規模なリストラに伴う退職金(特別損失として計上されることも多いが、一部が販管費に入る場合も)、本社移転費用、訴訟関連費用など、その期特有の大きな費用が発生すると、営業費用が一時的に大きく変動することがあります。これらを恒常的な費用と混同しないように注意が必要です。

  • 会計方針の変更:

    減価償却の方法(定額法から定率法へ、など)や耐用年数の見積もりを変更した場合、減価償却費が大きく変わることがあります。有価証券報告書の注記情報で会計方針の変更の有無を確認しましょう。

  • 費用の計上基準の理解:

    発生主義に基づき、現金の支出がなくても費用として計上されるもの(減価償却費、引当金繰入額など)があることを常に意識しましょう。

  • 「コストカット至上主義」の危険性:

    営業費用を削減することは重要ですが、将来の成長に必要な投資(研究開発、人材育成、マーケティング)まで削ってしまうと、企業の競争力を長期的に損なう可能性があります。「戦略的な費用」と「削減すべき無駄な費用」を見極めるバランス感覚が求められます。

まとめ:営業費用を制する者は、ビジネスを制す!

今回は、損益計算書における「営業費用」について、その基本から内訳、重要性、分析方法、そしてキャッシュフローとの関連まで、徹底的に解説してきました。

最後に、この記事の重要なポイントをおさらいしましょう。

  • 営業費用とは、企業が本業で儲けるために使った「販売費」と「一般管理費」のこと。
  • 営業費用の分析は、企業の収益力、コスト管理能力、経営戦略を見抜く鍵となる。
  • 設備投資は直接営業費用にならず、「減価償却費」として期間費用化される。
  • 営業利益と営業CFの差に注目し、減価償却費や運転資本の影響を理解することが重要。
  • 時系列比較、売上高対比、構成比分析、同業他社比較といった多角的な分析が有効。

営業費用を深く理解することは、まるで企業の健康診断を自分で行うようなものです。表面的な数字に惑わされず、その裏に隠された企業の真の姿を読み解く力を養うことができます。

この記事が、あなたの会計リテラシー向上の一助となれば幸いです。ぜひ、ご自身の会社や気になる企業の決算書を手に取って、営業費用の分析にチャレンジしてみてください!

 

 

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